10月29日、5つの地域と日本の推薦者自らが参加演目の内容、背景について紹介する「プレゼンテーション」で幕を開けた東京芸術祭ワールドコンペティション。2日目の午前には作品上演に先駆け、アーティスト審査員長のジュリエット・ビノシュ氏、副委員長の夏木マリ氏、芸術祭総合ディレクターの宮城聰による記者会見が行われました。
会見の冒頭では宮城ディレクターが挨拶。「現代社会では技術や経済のグローバル化が進み、皆が同じ土俵の上にあるという誤解のもと、異なる文化へのリスペクトが後景に退きつつある」と指摘したうえで、コンペティションの創設を通して「「力」の大きさを測るのではない、他者の価値観を認め、敬意を払うことにつながる、あらたな尺度を発信していきたい」とその意義を強調しました。
また、アーティスト審査委員長を務める俳優、ジュリエット・ビノシュ氏は「今日においてあたらしい価値とは何か、それが未来を助けるものであると信じたい」とコメント。6作品の観劇に加え、5時間にわたって予定されている公開審査会についても、「あらたな価値観を知るのではなく発見することが重要。偏見や先入観をできるだけ排除して目の前の人と議論を重ねたい。対話の中どのようにあらたなアイデアが発見され、自分自身の思考も変化するのか。そのプロセスにも興味を抱いています」と意欲を見せました。
副委員長は、『印象派』シリーズなど、独自の舞台表現を国内外で展開するMari Natsuki Terroir主宰の夏木マリ氏。徒手空拳で世界とのつながりを求めてきたという自身の苦労にも触れつつ「これまでは曖昧にされてきた、舞台芸術の世界基準をあらためて明確にしつつ、複数化もできる。(コンセプトと一つとなっている)2030年代に向けた新たな舞台芸術のあらたな価値観を次世代につなげていくことで、変えられることがあるんじゃないかと思います」と、今企画への期待を語りました。
異なる価値観を出合わせ、語り合うことから、新たな思考、価値観を発信しようとするこのコンペティション。アーティスト審査員による「最優秀作品賞」「最優秀パフォーマー賞」「最優秀スタッフ賞」のほかにも、日本語で批評を発表する批評家たちが議論し決定する「批評家賞」があり、審査はいずれも11月4日に公開で行われます。
明日以後も『ハウリング・ガールズ』、『紫気東来—ビッグ・ナッシング』、『ソコナイ図』、『汝、愛せよ』と上演は続きます。1作品でも観劇すれば投票可能な「観客賞」も用意されていますので、ぜひ、劇場へお運びください。
東京芸術祭ワールドコンペティション2019
次代を担う表現者が世界から集結!舞台芸術を評価する新たな「尺度」をここから生み出します。
日程:10月29日 (火) 〜 11月4日 (月休)
会場:東京芸術劇場 (プレイハウス、シアターイースト、シアターウエスト ほか)