演劇と待ち合わせるインフォメーション空間『東京芸術祭ひろば』開催レポート!【前編】東京芸術祭の魅力を深める、出会いの場

10月11日(水)から10月22日(日)までの約2週間、東京芸術劇場アトリエイーストおよびロワー広場にて、東京芸術祭 2023の情報をお届けする『東京芸術祭ひろば』(以下、ひろば)が開催されました!
東京芸術祭のインフォメーション空間として会期中の演目情報など、芸術祭の見どころを展示形式でご紹介したほか、トークイベントやワークショップなどのイベント、参加型のブースなども展開され、来場者の交流はもちろん、さまざまな情報が交錯するまさに“ひろば”のような場所となりました。
東京芸術祭を楽しみにしていた方や「もっと知りたい!」という方、たまたま通りがかった方など、延べ4,184名にご来場いただいた今年のひろば。その様子を、ひろばスタッフの村松がレポートします!

(執筆:村松鈴音 写真:古田七海)

本年のひろばは5つのキーワードから東京芸術祭の魅力を深め、さらに楽しむことを目的とした「アトリエイースト」と、特別企画『はじめまして演劇 はじめまして東京芸術祭』を行った「ロワー広場」の2カ所に分かれて開催しました。
前編では、アトリエイーストでの様子をお届けしていきます!

まちなか——街の中で、はちあわせる作品たち

会場に足を踏み入れると、何やら気になる自転車と掲示板が。こちらは1つ目のキーワードである「まちなか」の展示です。
東京芸術祭では、劇場から飛び出して街中での演劇体験やアートプロジェクトを行うことで、普段はあまり劇場に足を運ばない人などより多くの人と出会い、つながることを目指しています。
そのためこちらでは、展示を見るだけでなく、日々の生活の中で小さな演劇を楽しむ『くらしチャレンジクラブ』のプロジェクトを体験することができます。来場者を待っているのは「戯曲」。戯曲とは、演劇の脚本や台本のことを指します。初めは「戯曲って難しそう…」と思われる方もいらっしゃいましたが、肩に力を入れずとも楽しめるのがくらしチャレンジ。誰かが書いた戯曲を座って読むのも良し、戯曲づくりのヒントとなる「戯曲のタネ」を残すのも良し。もちろん、実際に自分のくらしから戯曲を書いてみることも大歓迎です。たくさんの方が、それぞれの方法で「くらし」を共有してくれました。

「だれかに戯曲にされても良い思い出」や「最近くらしで気になっていること」、「池袋のおすすめスポット」など、幅広いテーマが用意された「戯曲のタネ」の掲示板は、最終日にもなると、みなさんのくらしのワンシーンでいっぱいに。
戯曲づくりに挑戦する方は、初めこそ筆が進まず、悩んでいる様子も見られましたが、達成感溢れる表情で完成した戯曲をBOXに提出してひろばを後にされる姿に、スタッフ一同とても嬉しくなりました。

舞台——舞台の上で、出会える作品たち

「まちなか」の向かい側に見えるキーワードは、「舞台」。こちらでは、東京芸術劇場で開催するさまざまな演目について、本や写真などを使ってご紹介しました。
例えば木ノ下歌舞伎の『勧進帳』の展示では、歌舞伎のいろはを知ることができる本がいくつか用意されており、気軽に手に取って楽しむことができます。たまたま通りかかったという方も、この展示から気になる演目を見つけることができたのではないでしょうか!

こども——こどもたちと、楽しめる作品たち

何やらカラフルな作品が印象的なこちらは、ひろばと同時期にアトリエウエストで行われた『アトカル・マジカル学園』のご紹介です。
アトカル・マジカル学園 アートサポート児童館』は、大人が観劇などのアート鑑賞を楽しんでいる間、子どもたちに「預けられた」という意識を持たせることなく「また行きたい」と思えるようなアート体験を提供することを目的にした、アート体験型託児プログラム。ひろばでは、実際に過去のプログラムで子どもたちが作ったはっぴを展示しました。タイミングが良ければ、はっぴを着てパレードをする子どもたちにも会うことができます。ひろばスタッフにとっても、心躍る癒しの瞬間でした…!

ファーム——学び合って、作品の種を育てる

そのお隣では、東京芸術祭の人材育成と教育普及の枠組みである「東京芸術祭ファーム」から『Asian Performing Arts Camp』についての展示ブースが設置されました。
アジア各地で活動する舞台芸術の人材が、リサーチやフィールドワーク、ディスカッションを通じてこれからの自身の活動やフィールドを耕すという目的で行われたアートキャンプ。参加者の足跡を、映像や写真などさまざまな形でお届けしました!

映像——スクリーンから、飛び出してくる作品たち

振り向くと見えるこちらのコーナーでは、映像の力を使って舞台芸術を未来に繋げて残していくという取り組みを行っているEPADのご紹介など「映像」をキーワードにした展示を行いました。ロワー広場での上映とあわせて、これまでとは違う視点から舞台芸術の未来を考える機会になったのではないでしょうか。

TOKYO The MAP——地図を作って、東京を学ぶ

ひろば奥の壁にかけられた大きなネットが気になるこちらのブースは、玉川大学芸術学部に所属する学生さんたちとの共同企画です。MAPという名前の通り、劇場を中心にした“思い出の場所”を共有してもらい、みんなで地図をつくるという来場者参加型のプロジェクトになっています。
学生の皆さんが製作した各区の模型はラメシールで埋め尽くされた渋谷など、特徴を捉えたものがたくさん。学生のほとんどが東京都以外の出身で「名前は知っているけど、どこに位置していて、何があるのか分からない…」という声が多かったことからはじまったというこのプロジェクト。それぞれが担当の区を決めて製作した模型の中から、まずは自分の“思い出の場所”を探していきます。
帝国劇場や本多劇場、そして東京芸術劇場などの劇場のほか、誰かに教えたいお店や公園などのある場所にピンを指した後は、その場所でのエピソードやおすすめポイントなどをカードに記入し、ネットに飾れば完成!日に日にその数は増していき、最終日には大きなネットにも飾り切れないほどの“思い出”で溢れる素敵なマップが完成しました。

玉川大学の学生が在中して来場者とMAP を作っている様子

語らい——トークやワークショップで、つながる出会い

常設展示やブースの他にも、毎日さまざまなプログラムが開催されたこともひろばの特徴の1つです。学生トークサロンでは、大学などで舞台芸術を学ぶ学生たちが集まり、お互いの活動を共有したり、キャリアについて話し合ったり。「舞台芸術」という1つのテーマのもと、新たな仲間たちとの交流が行われました。イベント後には、ゆっくりとその場を楽しみ、談話できるような空間が生まれる様子も。
開催期間中には、何度も足を運んでくださる方や「ここは居心地がいいね」という嬉しい言葉をかけてくださる方もいらっしゃいました。私自身、スタッフとしてひろばに通った日々を思い返してみると、嬉しい出会いに立ち会った記憶ばかりが浮かんできます。

ファーム スクールやまちなかプログラムのトークやワークショップが行われました

昨年から企画・コーディネートを担当する東京芸術祭 広報の村上愛佳さんにひろばの様子について聞いてみました。

村上愛佳「今年はより“ひろば”のような空間になっていたように感じられました。東京芸術祭の魅力を伝えるため『くらしチャレンジクラブ』や『Asian Performing Arts Camp』と、思い思いのかたちで演目の魅力が伝わるように展示方法を考えたり、玉川大学とも共同で参加型企画を立ち上げたり、実際のひろばのように自由で独自性のある動きが次々と生まれていました。
これらがもたらす自由で風通しの良い空間と関係を通じて、芸術祭スタッフ同士の仲が深まっていることも感じられました。毎日顔を合わせてコミュニケーションを取り、刺繍などの作業を通じた、まるでクラブ活動のような賑わいのある空間と関係性の効果かもしれません。良いかたちで芸術祭を知ってもらうためには、やっている人たちも楽しんでいたり愛着をもっていることって大事だと思うんです。」

ひろば担当の村上愛佳

会期中にはスタッフでひろばで起こった「戯曲のタネ」を毎日書きました

このように、さまざまな切り口から人々をつないできた『東京芸術祭ひろば』。約2週間という限られた時間ではありましたが、東京芸術祭のインフォメーション空間として、芸術祭に興味がある方にとっても、たまたま立ち寄った方にとっても、東京芸術祭との「出会い」を提供できていたのであれば、心から幸せに思います。
ご来場いただいたすべての皆様、誠にありがとうございました。

【開催概要】
期間:2023年10月11日(水)〜10月22日(日) 12:00~20:00 ※最終日のみ18:00終了
場所:東京芸術劇場 ロワー広場、アトリエイースト
言語:日本語
料金:無料(一部プログラムによっては要予約)
アクセシビリティ:車椅子の導線確保、筆談、やさしい日本語の対応可

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