『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』
観劇レポート
日本大学芸術学部演劇学科1年
川島妃奈
 私は、10月22日木曜日に公演された『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』を観劇した。私にとって野外劇場での観劇は今回が初めてということもあり、胸を躍らせながら池袋に向かった。天気は曇り、少し風が吹いており野外観劇をするには少し肌寒い日ではあったが、それも含めて今日だけの舞台を体感することができた。劇場に着くとグローバルリングシアターの中に組み立てられた舞台が外野からも見ることが出来、閉鎖的な室内劇場との雰 囲気の違いに驚いた。劇場はよく「箱」と呼ばれるが、そこには社会との壁がないと感じた。 また、この日に聞いた会話でそれを実感することが出来た。それは、チケットを持っていない人がチケットを持っている知り合いに「当日券がなかったらその辺で聞いています」という会話だった。私にとってはこの会話がとても新鮮なもので、客層に威圧感を与えない、正に理想の劇場体系だと思った。 役者については声量や身体、表情の動きすべてが大きく、迫真の演技に驚いた。特にカズ オが孤独に葛藤する場面では、鼻水とよだれを垂らしながら台詞を語る姿に役者の本気と 人間の極限状態を観た気がした。また、フクダを演じていた川鍋知記さんが個人的に印象的 だった。前半から後半にかけて、ミキという役と彼自身の中で変化があったように思えた。 最初の荒々しい雰囲気から優しい人間への変化は身体への力の込め方や重心の場所が関係していると考察した。一方でハナコの声がハスキー過ぎることによって、観る際に少し息苦 しさを感じた。斎藤友香莉さんの演技自体はとても好みであるのに対して、どうしても掠れた声が気になってしまった。特にハナコがミキとフクダに電話をするシーンはもっと声が息に乗っていればいいのにと思った。この事が演技と声、息の密接な関係を深く考えるきっかけになった。 舞台の観劇を終えて、人間の欲深さや醜さが繊細に表現されている作品であると感じ、笑顔で「みんな空っぽ」と歌う場面は恐怖を感じた。また、日本人としてこの舞台を観るのは 少し辛いと思った。しかし、一方でこの演劇は二回目の方が今回の倍は面白く感じるのだろうとも思った。それは、舞台中にもあった「グルングルンと繰り返す」のように開演して終演して、また開演するこのサークルを重要視する舞台を、役者たちがどう演じきるのだろうかと思ったからだ。残念ながら予定が合わずに二回目の観劇は叶わなかったが是非観てみたかった。この舞台においてグローバルリングシアターという、社会と演劇とが何の隔たりも無く繋がる場所で、如月小春の『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』を公演すること自体に意味 があったのだと公演後に感じた。さらに、この舞台は私にとって「今起きている演劇」を意識させるものであった。