『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』
観劇レポート
日本大学芸術学部演劇学科2年
山本あかり
 今回私は初めて野外劇を見た。池袋のど真ん中、都会の中心の野外で見る劇は不思議な気持ちになった。劇場内で見る劇も、公演が始まると別の世界に飛ばされたような気分になるがそれとは桁違いだった。普段通っている道や普段目にしている看板が装置として非常に効果的に機能していた。特に「声がガラスとコンクリートに反射し・・・」の場面では劇中と現実の世界が限りなく近くなり、まるで劇の方から自分に近づいてきて飲み込まれるような錯覚に陥った。劇中にちらりと目に入るカラオケ館のネオン看板。テレビ局のシーンでは自分たちの傲慢さを実際の高層ビルが物語っていた。池袋のギラギラとした世界と劇中の様子がこんなにも綺麗におどろおどろしく混じり合うのだなと感じた。劇に入り込みながらも、周りの景色を見てどこか心が冷静になってしまう。そんな新しい体験をする事ができた。
 その他の演出についてもさまざまな感想を抱いた。ストレートでBGMやSEが生演奏の演劇を初めて見た。生だからこその臨場感があり、特に「ニッポン、チャチャチャ」の歌の一体感を影で支えているのは生での演奏だなと感じた。また、舞台が横に広くエリア分けされてた事により様々なシーンをテンポ良く演じられていた。演技空間が広くセリフ以外の演技が多い事により、セリフのないシーンでも心が動かされる事が多くあった。そして見る席によって違う印象を受ける今回の舞台構成は面白いと思った。劇場であればどの席からも大体同じように見える造りになっているところが多いと思う。そのため今回の劇は下手、上手、センターと3つの視点から見てみたいと思った。
 劇中の歌についても、ものすごいパワーを感じた。応援する歌が明るく盛り上がるにつれてかずおの心が辛くなっていく様子が歌の力強さを顕著に表していたように思う。演技も常に全力で少しクセがあり見ていて非常に引き込まれた。登場人物が多いながらもそれぞれのキャラクターがわかりやすく、姿や立ち振る舞いが変化しても尚すぐに誰なのか認識することができた。今回の劇は登場人物の変化が激しかったが、それに観客が取り残されることなく物語に入り込むことができた。
 今回の観劇を通して、野外劇のおもしろさや歌の力など様々な魅力に気づく事ができた。この経験を自分の中で消化し、今後の創作活動に生かしていきたい。