さる7月26日、東京芸術劇場内で「東京芸術祭 2019」の記者発表を行いました。
今年あらたに掲げられたテーマは『出会う。変わる。世界。』。
宮城聰総合ディレクターは、「演劇は、自分以外の他者と出会う旅。他者に出会うことで自分が変わり、人々が変わることで、世界が変わっていく」と、この言葉に込められた願いをひもときます。
企画の構成にあたっては、“分断の縫合”“人材の育成”“発信力”が意識されており、なかでも今回の記者発表では、つくり手と観客が一体化して自足する日本の“閉じた”演劇界を打破し、社会にひらくための取り組みが、全体を貫く問題意識として示されました。
多様な価値観、多様な表現があふれる現代社会において、「表現や意見に正解はない」といった立場は、一見正論に見えて、他者に対する無関心を助長する危険を伴います。新企画「ワールドコンペティション」で、賞をめぐる競争の場を用意したことも、「世界規模での切磋琢磨を通して、より広い世界へ目を向ける」機会、そのための議論を活性化させるための仕掛けのひとつだと、宮城総合ディレクターは語ります。
さらに、コンペティションのアーティスト審査員賞の審査委員長にはフランスの元文化大臣でナンシー演劇祭の創始者でもあるジャック・ラング氏、副委員長には、MNT(マリナツキテロワール)主宰の夏木マリ氏が就任することもこの場で発表されました。「まさに鉄壁の布陣です。審査員の方々には、コンペの参加作品だけでなく、ほかの東京の舞台芸術にも触れてもらい、新しい才能を発掘してもらえたらと思っています。そこから若いアーティストが世界への足がかりを得る可能性もありますし、その積み重ねから、やがて、アジアの舞台芸術家の多くが日本を視野に入れるようになれば、発信拠点としての東京もこれまで以上にプレゼンスを増すのではないかと期待しています」
東京芸術祭国際事業、としま国際アート・カルチャー都市発信プログラム、フェスティバル/トーキョー、東京芸術劇場オータムセレクション、アジア舞台芸術祭人材育成部門の5つの事業からなる東京芸術祭は「多面体としての芸術祭」だという宮城総合ディレクター。記者発表の締めくくりには「それぞれの事業を通じて育成された人材、そこで見出されてきた芸術祭としての核心を守るためにも、規模を拡大し、東京芸術祭を世界で五指に入るフェスティバルに育てたい」との展望も語られました。
東京芸術祭は9月21日(土)のIKEBUKURO薪能「能楽Quest」で幕を開け、11月23日(土)までの64日間にわたって開催されます。伝統芸能から時代の先端を探る演劇、ダンス、まちと人々を巻き込むアートプロジェクトまで、多彩な表現が導く新たな発見、出会いにご期待ください。