学生観劇プログラム

『野外劇 ロミオとジュリエット イン プレイハウス』

玉川大学・日本大学合同座談会レポート

語り合いから見えてきた 幕がおりても続き、つながる演劇体験

学生をはじめとする若い観客を対象に、舞台鑑賞を通して思考し、交流を広げ、深める機会を提供する「学生観劇プログラム」。今年度も、10月以後『Me, My Mouth and I』公開レクチャー・合評会、「太陽劇団特別上映会」ロビートークなどの活動が、オンラインも活用しつつ行われている。ここでは、東京芸術祭の顔として2018年から上演されてきた野外劇シリーズに連なる『野外劇 ロミオとジュリエット イン プレイハウス』の観賞後の座談会の模様をレポートする。
(取材・文:川添史子)

10月15日、東京芸術劇場で上演された『野外劇 ロミオとジュリエット イン プレイハウス』楽日終演後、学生観劇プログラムの一環として、玉川大学および日本大学の学生による座談会が開催された。同企画は本会場(同劇場5階ミーティングルーム3)と地下1階アトリエイーストのリモート会場をつなぎ、本会場の座談会には玉川大学芸術学部より3名、日本大学芸術学部より2名の学生と大学院生1名、ファシリテーターとして玉川大学の多和田真太良先生が参加。リモート会場にも同日に観劇した玉川大学の学生が集まり、本会場の模様を視聴しながらリモートで議論に加わった。アトリエイーストからは学生だけではなく、今公演の制作なども参加(他リモート視聴者もあり)。観劇直後ということもあって率直な感想が飛び交い、さらには「芸術と社会を結ぶとは?」「公共性ある作品とは?」など舞台芸術を学ぶ若者たちならではの未来に向けた対話も展開した。

今回の『ロミオとジュリエット』では、「近未来の池袋」、「人はみな、望む性を自由に名乗れ」、「男女がほぼほぼ分断され」ているという設定のもと、ロミオを筆頭にモンタギュー家の配役を女性が、ジュリエット以下キャピュレット家の配役を男性が演じた。当日パンフレットに記載された演出家・青木豪のコメントによれば、戯曲通りだと女性役が4つと限られているため(ジュリエット・キャピュレット夫人・モンタギュー夫人・乳母)、こうしたコンセプトを設定することにより、女性俳優に対して機会を「ひらく」ことも目指したのだという。

座談会冒頭の話題もこの「男女逆転」の演出効果について集中。「観ていくうちに違和感が消え、すんなり受け入れて最後まで観られた」「逆転させる意図が明確に見えたかは疑問」「女性役を演じる役者が、男性性を使って笑いをとる箇所が気になった」「観客の中でこうしたさまざまな意見が出る仕掛けとして、異化効果の役割を果たしているのでは」など、多種多様な感想が出た。さらに先生からの問いかけによって、車の音など意図的に挿入された効果音について、舞台奥で曲を流すDJの存在が果たした役割、「近未来の池袋で刀で戦う!?」といった演出面に関する発見や感想(ツッコミ)が大いに盛り上がり、意見も飛び交った。

この公演は当初GLOBAL RING THEATRE(池袋西口公園野外劇場)での上演が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響により、東京芸術劇場 プレイハウスに会場を移しての上演となった。「野外劇で光りそうな演出が多いと感じた」「野外なら、作品に散りばめられた虚構性と現実が上手く調和したかもしれない」といった意見が出たところでアトリエイーストで参加していた制作と繋げ、屋内になったことでのプラン変更などを質問。刻々と変化する感染状況を受け「野外劇を場内にインストールする」というプランにスイッチされた経緯など、貴重な現場の声を聞いた。

制作からの「ぜひ帰りに、本来上演会場になるはずだった西口公園に立ち寄り、街の音や光と今日聴いた台詞を重ねてもらえれば」という言葉を受け、リモートで参加していた日本大学の藤崎周平先生からも「野外で上演したらどうだったか、屋内で上演することによって排除されたこと(人)はないのか、戯曲通りの性別で演じられたらどんな感触の違いが生じたかなど、上演形態自体にミステリー小説を解読するような面白さが生じたと思う。現代における舞台芸術を考えた時に意識すべきトピックに満ちた、教材としても絶好の芝居」と、学生たちへの課題のような言葉も与えられた。

座談会に参加した学生たちは皆、学内公演などで舞台経験を積んでいる。「若い観客が500円という低価格で古典を観られることは素晴らしい」「(芸術祭の“ひらく”というコンセプトを受け)舞台芸術を誰に対して/どうやってひらいていけるか考えたい」「演劇経験者以外の人たちの感想を知りたい」など、つくり手目線から「演劇と社会をどう結びつけるか」についても多方向に思考したことがうかがえた。

まとめとして、参加した学生たちに座談会を終えての感想を聞くと、「現代に古典を演じることのハードルを考えた時に、男と女、過去と未来、内と外といった対抗軸をカジュアルにごちゃ混ぜにしてくれた作品だと感じた。けど、みんなと話をしなかったら、こうしたゴールにたどり着けなかったかもしれない」「コロナで多くの演劇公演が中止となり、演劇自体を観る機会が減る中、この経験は財産」と充実の表情。舞台の感想を語り合うことや、議論の楽しさを実感したことが伝わってきた。

最後に進行を務めた多和田先生が「舞台芸術は、人々が劇場に集い、そこからまた社会に散っていくもの。こうした時間を通して、日常生活に舞台を持ち帰る大切さを感じてほしい」と語りかけ、「終演後も考え続ける」ことの重要さを伝えた。自分の思いや発見を話し、違う意見を含めた人の解釈を聞き、作品を受け取って考え続け、舞台芸術と社会の関わり方を思索する――人が集まって対話がしにくい時期が続くが、学生にとって、しばしの充実した時間になったことだろう。


学生観劇プログラムの詳細はこちらから
https://tokyo-festival.jp/farm_program/student/

川添史子

編集者・ライター。演劇情報誌「シアターガイド」に11年間在籍。ストレートプレイ、歌舞伎、演芸、ダンス、地域演劇など様々なジャンルを取材。2014年よりフリーとして活動。