東京芸術祭 2022 人と芸術が多様に交わるインフォメーション空間「東京芸術祭ひろば」開催レポート!

東京芸術劇場アトリエイーストで10月11日(火)から10月23日(日)までの約2週間、東京芸術祭 2022の魅力がつまった情報と交流のスペース「東京芸術祭ひろば」を開催しました!
東京芸術祭のおすすめ情報をお届けするほか、アーティストや演劇を学んでいる学生を招いたトークやワークショップ、個人がつくる小冊子(ZINE)の印刷・交換スペースを開催しました。
東京芸術祭に訪れた人はもちろん、近所に住む人やたまたま通りすがった人など、誰もが行き交い色んな形での交流が行われました。

期間中約1500人の方たちが来場した東京芸術祭ひろばの様子を、スタッフの柏原がレポートします。

ZINEでつながる『RISO ZINE ステーション』

受付を通ってまず目に入るのは、壁一面に広がるたくさんのZINE。
過去3年間に色んな人によって制作されたZINEが壁いっぱいにかけられました。(*1)来場者は気に入ったものを自由に取って持ち帰ることができます。また『RISO ZINE ステーション』では、壁の小冊子と同じガリ版印刷技術を使ってオリジナルのZINEも制作することができます。
(※1:F/T19・F/T20・東京芸術祭2021FTレーベルにて開催した「つながる!ガリ版印刷発信基地」にて制作されたZINEが飾られています)

あらかじめデザインを決めて丁寧に作成する方はもちろん、お絵描きが好きな幼稚園生や小学生にもたくさん飛び入り参加していただきました。壁から誰かのZINEが持ち帰られては、また新たなZINEが加わってと、直接相手を知らずとも自然と作者を想像することで繋がることのできる空間です。

ZINE制作の様子。スタッフと一緒につくっていきます

東京芸術祭を知る・体験する「4つのプログラムコーナーとイベント」

そんな『RISO ZINE ステーション』の向かい側にあるのは『みてって 舞台』のコーナー。場内は4つのコーナー(① 舞台  ② ワークショップ  ③ 伝統芸能  ④ 人材育成ファーム)に分かれ、東京芸術祭で上演される作品の詳しい情報を関連書籍や舞台写真アーティストのコメントなどと一緒にご案内しています。

「片桐はいりさんの野外劇を観に来たのよ」と嬉しそうに嵐が丘の説明を読んでいく人がいたり「実は演劇とかあんまり分からなくて……」「こんなに色々やっているんだね」と驚かれていたり。

お目当ての情報だけではなく、他の公演情報もすぐそばに展示されているので、あまり馴染みのない情報も簡単に手に取ることができます。特に、タイ王国と日本の歴史を紐解くレクチャーパフォーマンス公演「An Imperial Sake Cup and I ー恩賜の盃と私」の事前レクチャーを開催したこともあり、長く日本に住むわたしたちにとっても、改めてアジアについての学びを深める良いきっかけになったのではないでしょうか。

「An Imperial Sake Cup and I ー恩賜の盃と私」事前レクチャーも会場内で行われました

続いて見えてくるのは『あつまれ ワークショップ』のコーナー。
ここでは、グランドオープニングで実施された「シン・マイムマイム」や「くらしチャレンジ(大人とこどものための戯曲集)」、「アトカル・マジカル学園」など市民参加型プログラムの紹介が集められています。劇場から外に出て、街なかで開催されているものも多く、演劇やパフォーマンスについてあまり知らないという人にも触れていただきやすい情報がたくさん掲載されました。

さらに『ふれる 伝統芸能』のコーナーでは、民俗芸能上演の情報やTikTok版「としま能の会」の動画の配信も行いました! また、豊島区要町に伝わる「冨士元囃子」を流すなど、普段とは違う方向から地域を味わえるコーナーです。

会場奥のコーナー『とびだせ ファーム』では人材育成のプログラムの紹介だけでなく、宮城聡さん(東京芸術祭ディレクター)や小野寺修二さん(野外劇「嵐が丘」演出家)、舞台芸術を学ぶ現役大学生を招いたトークサロン、また東京の大学で演劇を学んでいる中国からの留学生による「烏鎮演劇祭」の紹介なども開催し、毎回たくさんの方にお越しいただきました。

「東京で舞台芸術を学ぶ!2022 学生たちが考える『いま東京で舞台芸術を学ぶこと』」という東京のさまざまな大学で舞台芸術を学ぶ学生のトークサロンでは

「演技とは答えのないもの。そこから見えてくる人間自体の面白さやわからなさにものすごく魅力を感じる」

「やっぱり同じ空間で観客も一緒に演劇を体験する大切さがあるよね」

「演劇という一つの媒体として、どんな社会問題を解決できるか勉強したい!」

稽古場における演出家と役者の対等性ってどうしたら実現できるだろう?」

など、それぞれの想いを語り、これまでの体験に基づく強い意志や舞台芸術に対する熱い情熱を感じることができました。

「プロフェッショナルと出会う スタッフ編」でのQ&Aトークで学生に「今から始めた方が良いのは外国語習得。新しい言語が使えると自ずと知見を広げることができるから」とお話しされたのは、東京芸術劇場事業企画課で「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」プロデューサーの𠮷田直美さん。これからの日本の舞台芸術を担う学生たちが、どんな視点を獲得して一体どんな未来を描いていくのかとても楽しみです!

この場所を知る・好きになる『としまくマップ』

来場者参加型コーナーとしてもう一つ設営されたのが『としまくマップ』。板に印字された豊島区の地図に、紙とマスキングテープを使って自由にお気に入りのスポットや紹介したいお店を加えていきます。

最初は数えられるほどしかなかった情報が、いつの間にかたくさん増えてマスキングテープが大渋滞に。

「このすぐ近くで習い事をしていて、その帰りに寄ってみました」

「今日はね、友達と待ち合わせをしているんだけど、まだ少し時間があるから見に来てみたのよ」

「僕はこの辺で紙芝居をやってるんですよ。それでこどもたちにこれを渡そうと思ってね」

「このあたりだったらよく行く公園があるじゃない!そこを貼ってみようよ」

このように『としまくマップ』は気軽に地域密着の情報交換ができるコーナーとして盛り上がりを見せていたように感じます。こうしたささやかな会話がこの地域をより好きになる大きな要素になっていたのではないでしょうか。

連日いろんな目的を持った人が行き交い、いろんな形で交流が生まれたスペース「東京芸術祭ひろば」の様子を、こうしてスタッフが毎日日誌で記録し掲載していました。

東京芸術祭の3ヶ月におよぶ会期のなか、約2週間のインフォメーションスペースとして「東京芸術祭ひろば」をひらき、東京芸術祭の魅力をぎゅっと凝縮して多くの人に届けることができました。期間中は約1500名の方にお越しいただき「これまで東京芸術祭を知らなかった」「知っていたけどはじめて参加した」という方が非常に多く、劇場を「ひらく」そして芸術と「つながる」ような場所として機能していたのではないでしょうか。
ふと立ち止まり見つけた案内や偶然居合わせた出会い。画面を通してではなく、肌で感じられる「ひろば」の人の温かさはこれ以上なく愛おしいものでした。

Writing:Coco Kashiwara
Photo:Mao Matsukawa

東京芸術祭ひろば

期間:10月11日(火)〜10月23日(日)12:00〜20:00
場所:東京芸術劇場 アトリエイースト
言語:日本語/やさしい日本語/英語
入場:無料
プログラム紹介:https://tokyo-festival.jp/2022/program/hiroba

空間デザイン:Hand Saw Press
Hand Saw Pressプログラム特別協力:理想科学工業株式会社
グラフィックデザイン:三上悠里
企画・メインビジュアル:村上愛佳