日本大学芸術学部演劇学科1年
佃新之助
今回の観劇は自分にとって初めての体験がとても多かった。まずイタリア語と日本語の対立によるフィガロの演出だ。鎖国状態の日本が舞台である本作は、どうしても生まれざるを得ない言語間での対立を見事に笑いに変えつつ表現していた。この世界では言語の壁は存在しないんだ、という表現がコミカルな雰囲気を作りつつ、国による障壁を意識させなくするという現代的な問題に対するプラス効果も生んでいたと思う。作中には歌の中で言語が目まぐるしく変わる場面もあり、歌もまた会話のような響きになっていた。そして劇中に何度か出てくる、操り人形を扱うような演出にも感動した。随所で回想が入り登場人物の行動予想が行われる、または休憩終わりに今までのあらすじを説明する際に実際に演者が出てきてマリオネットのようなスムーズではない動きをすることで、ユーモアを持ちながらも、いるといないでは大きく違う重要な役目を果たしていた。少し難しい部分もあったので流れが理解できなかった時には、その時間がとてもありがたかった。庭師の物語口調で語られる本作はまるで絵本の中にいるようなそんな不思議な没入感を生み出してくれた。自分の中にあった堅苦しさを持つオペラという固定観念が変わったとてもいい経験になった。