『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』
観劇レポート
日本大学芸術学部演劇学科2年
野上花歩
 野外劇というものを初めてみた。始まる前は、どのようなものなのかというわくわくと、普段劇場では味わうことのできない開放感、役者さんがどこから出てくるのかわからないドキドキを感じた。 役者さんの生き生きとした演技、あちらこちらで演技をしていて、目が追いつかないくらい に、見る人を飽きさせない。歌も自然に取り入れられていて、本当に面白い演劇だった。 途中、面白さで涙が出そうになったくらいだった。声をあげて笑うような面白さではなく、見ていて楽しいと感じさせる演劇だった。 過去も未来もない、現在が永遠に続く、ぐるーりぐるりと繰り返し、というわたしには理 解が難しい言葉から始まった。 不景気で潰れかけていた靴屋を救ったマラソンが得意な少年と、少年をとりまく小さな街 の人々の物語。少年へのみんなの期待も大きくなっていくにつれ、物語のスケールや、時代 が進んでいく。最終的に少年は、時代、期待に押しつぶされてしまう。 中盤までは物語がうまくいきすぎて、見ている側は怖かった。そんな頃に役者のセリフにも、うまくいきすぎて怖いというセリフがあり、そのとき私はただ演劇を見ている目線ではなくて、その物語に入りこんでいる気持ちになったし、そういうやり方で観客を取り巻いているのかと感動した。 役者さんたちが、あちこちで演技をしているため、主要となるシーンの役者さんだけを見つめるということは私にはできず、目が忙しかった、それに対してゆっくりと語るシーンでは、周りの役者さんは一切出てこないで、そこにだけ引き寄せられる。意思関係なしに、(悪い言い方だか、)振り回される自分。劇中、観客は役者さんたちに指をさされ、「空っぽ!!!」 と叫ばれるシーンがある。からっぽってなに??私ってからっぽなのかな?中身ってある のかな? と訳の分からない思考がぐるぐるする。思考がぐるぐるしている時点で私はから っぽなのか?歌が頭に残り、見終わってもからっぽからっぽという言葉が頭の中をぐるぐるした。からっぽに関して正解はないと思うが、自分の中でからっぽについて一つの答えを出すことができなかった。しかし、この思考を巡らすことがこの演劇を観た人に求められているものだということは感じた。
 今回は、野外劇の魅力も感じた。周りの人々が歩く足音、話し声は聞こえなくとも、風、空 気は、今現在の池袋の広場でそこで少し前のお話が上演されている。側から見れば、それだけの事実だ。少年が倒れる時、たまたま救急車が音を鳴らしながら通った。音響かと思いきや、舞台の奥に見える道路に救急車が見えた。私はこの演劇の物語の中にいて、さっきまで 過ごしていた世界が外のように思えた。そんな変わった空間にいることを感じた。劇場で上演される演劇は、初めから閉ざされているため、「外」を認識することはないからだ。 今回、観劇して考えさせられること、謎が残る部分はあったが、何よりも、観劇を楽しめた ので、本当に観にいけてよかった。本当は予定が合えばもう一度観劇したい劇だった。