『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』
観劇レポート
日本大学芸術学部演劇学科2年
阿部汐李
 私が今回『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』を観劇して感じたことは主に4つあります。
 1つ目は屋外公演というものの面白さを感じました。私は屋外公演を観るのは今回が初めてでした。池袋駅前の賑やかな場所なこともあり、世界観に入り込めるのか不安に思う部分がありましたが、舞台の世界観と池袋の街が上手くマッチしていて、観ていてもまったくと言って良いほど気になりませんでした。屋外の舞台も普段の真っ暗な中で観る演劇とはひと味違っておもしろかったです。しかし、季節柄故に若干寒さを感じてしまい集中力が削がれた部分があった為、観客個人の体温調節が大切になると思います。
 2つ目は、生演奏の音響と演劇の一体感を感じました。バレエや歌劇ではオーケストラの生演奏を観たことはありましたが、演劇での生演奏は初経験でした。バレエのようにずっと流れているわけではなく、劇の中できっかけを掴み演奏者全員で息を合わせて演奏する事は簡単なことでは無いと思います。しかし、音楽の入りも終わりも生の劇に合わせながら作ることができる為、録音の音楽より演劇と音楽の統一感があるように感じました。
 3つ目は、ステージの構成が面白いと思いました。メインの舞台が1つと、上下に小さなアクティングエリアが設けられていました。私は下手側の席で観劇していたのですが、メインの舞台は勿論、同時に上手側に設けられた舞台での演技がとてもよく見えて面白かったです。下手側に少し目を向けると、また違って動きをしていました。正面、上手側、下手側と、どの位置から見ても違った様子が楽しめる舞台だったと思います。客席が半円状なのも見る位置によって様々な見え方があり、何度観ても違う様子が見えるのは面白いと思いました。
 4つ目は、父娘が船に向かうシーンでの出来事がとても印象的に感じました。ハナコがカズオのような影を見つけるも気の所為だと思い去っていく場面で、カズオが被っていた葉っぱの冠が中央の高いところから下に落ちました。これは演出なのか偶然なのか分かりませんが、「ハナコが完全にカズオと決別したシーン」に見えました。恐らくハナコは今後一生カズオのことを思い出し、悲しむことはないのだろう。私にそう感じさせる出来事でした。落ち方があまりにも自然だった為、演出ではなく偶然だと思いましたが、もしこれが演出なら、本当に細部まで計算されている演出だと思います。
 屋外公演や生演奏など、初めて経験することが多々あり、新たな考え方や発見が見つかった貴重な機会となりました。今後は自分の固定概念に囚われず、様々な表現技法に挑戦していきたいです。